旧優生保護法(1948?1996年)のもとで、「不良な存在」として、
わずか6歳の時に、生殖機能を奪う強制不妊手術を受けさせられた渡辺数美(わたなべ・かずみ)さんと70代の女性が、
国に損害賠償を求める裁判を熊本地方裁判所に起こしてから4年。
熊本地裁101号法廷で判決公判が開かれ、中辻雄一郎裁判長は、
『旧 優生保護法は憲法違反』と指摘し、国に対して、損害賠償を命じました。
私は、判決の日、ヒューマンネットワークの植田洋平事務局次長と共に
熊本地裁での門前集会に参加、その後、101号法廷の最前列に植田君と並んで陣取り、
今回の歴史的な判決言い渡しを聞きました。
民事裁判ではとても珍しい、『主文の言い渡し』を後回しにして、
判決趣旨から裁判長は述べました。その判決趣旨は、渡辺さんへ行った国の行為が、
いかに人の尊厳を傷つけ、憲法違反の行いだった事、
また憲法の『幸福追求権と基本的人権』をないがしろにした事を、
厳しく指弾する内容で埋め尽くされていました。
法廷で傍聴した全員が高揚していました。
場所を市民会館に変えて行った報告集会では、各地から駆けつけた弁護士たちが
『判決を聞きながら、うるっ、としていました』と口々に感想を述べました。
弁護士たちを感動させる判決文は、今後歴史に残るでしょう。
『なんで俺を産んだ』と文句を言った母親の墓前に『勝ったよ、と報告したい』と渡辺さん。
もう一人の原告の女性は、『家族に得意な料理を食べさせたかった』
と庶民の家族に対する細やかな思い、しかし生きる上で、
当たり前の日常生活を国が奪ったことへの悔しさを述べられました。
弁護団からは、『これ以上望み得ないほどの判決趣旨』と完全勝訴である事を強調されました。
これまで、全国の地方裁判所レベルでの勝訴は熊本が初めて。
今後控える各地の裁判の勝訴の先駆けになる事を切に願います。
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